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「火星パンダちとく文学」評論

泥臭いワンダーフォーゲル部が、バリバリの体育会系だというのは、意外と知られていない。
学生時代の2コ上のワンゲル先輩よりいただいた感想と励ましのメール……本のPRとしてどうなの?と躊躇しましたが……
否!これは愛情に満ちた激励の言葉であります。エイヤ!と気合で掲載するのであります。

「火星パンダちとく文学」評論

ちとくさん

「火星パンダちとく文学」読ませていただきました。
思ったよりは、おもしろかった、かな。

火星紳士さんは、文章は綺麗なんだけど、展開が物足りないというか、毒気がないのかな。
「グラス・コップ」などの着目点は面白いと思うけど、もうひとつ展開がない。
「むかご」などは、彼の人生経験の中では衝撃的だったのかもしれないけど、逆に経験の幅が見えてしまうかな。
ただ、それぞれの文章に主題がはっきりしているものが多く、その点では読んでいてとっても安心感がある。

上野屋ぱん駄さんの文章は、上手くはないけど、独特の世界観が面白い。
「ポルノ村」とか「サルスベリ」などが僕は好きです。
もっとも面白いと思ったのは「壁に耳あり」ですね。
最初は「恨めしそうに見るのは筋違いだ」と言っていたのが、すべて自分のオーダーで耳をそぎ落とされていたとは、思いもかけぬ展開。
短編でも、その小説の中で世界観を作りこんでいる様なモノが僕は好きですね。

さて、ちとくさん。
僕は「言わなかったこと」に心惹かれました。
「恍惚のザク」なども、僕はガンダム世代ではないけど似たようなことを田宮模型でしていたように思い、共感するところがあった。

本を出版するというのは凄い事だと思う。
そのエネルギーは相当なものだろう。
もちろん、作家本人もそうだけど、編集者やその他の担当者が膨大なエネルギーを懸けて作りあげていく。
誰にでもできることではない。まずは尊敬。

でもねーー。
勝手な読み手として言わせてもらうと、ちょっともの
足んないなー。
短編とはいえ、小説というよりも作文に近い様に思う。
それはなぜだろうか?と考えてみた。

読み終わって、
・強烈な印象が残る
・心が動かされる
・独特の世界観に引き込まれる
という作品が少ない。
やはり本にするからには、全ての作品において、上記のいずれかが読者からは求められると思うのだ。

また、1冊になんでも詰め込んでしまった感を感じる。
ほのぼのとした世界観の作品と、鋭利な刃物のようなものが入り混じっている。
また違った角度から見ると、水準以上の作品もあればんーーこれ載せたの?という作品もある。
つまり、レベル感や世界観がゴチャゴチャなのね。

そこを狙ってしまったのかもしれないけど、読者としては、初めて読む作家の本には、ある種の期待をしている。
「どんな作家なんだろう?」
言い換えれば、その作家の個性を求めているのだ。

僕は司馬遼太郎を初めて読んだ事がきっかけで本を読むようになった。
それまでは本なんて大嫌いだったのだが、司馬遼太郎と出会ってからは、週に2~3冊のペースで、数年間は歴史小説ばかりむさぼり読んだ。
「竜馬が行く」「国取り物語」「妖怪」などなど。
司馬さんのものは近代ものを除くとほぼ全て読んだ。

その後、小説では森村誠一、筒井康隆、落合信彦、柘植久慶、赤川次朗、楡周平、大下英治、馳星周、麻生幾、橘玲らに、その時期その時期で、はまったことがあった。
彼らに共通して言えるのは強烈な個性だ。

柘植久慶の極限の世界でのリアリティ。
本当に人を殺したことのある人にしか書けない文章なのだろう。

赤川次朗は若い頃に読んだのだけど、軽いタッチで、どんどん読み進められる。

馳星周の後味の悪さが良い。
決してハッピーエンドではない現実のやるせなさ。

筒井康隆が医学部で学んだ知識を裏付けに描くブラックジョーク。
間違って手術台に載せてしまった看護婦の内臓をひとつずつ切り刻む様や、遠い宇宙の星で顔面が少しずつ崩壊していく様を事細かに表現する色彩を帯びた恐怖。
小沢一郎や小泉純一郎の熱弁と共に唾までが飛んでくるような錯覚に陥る大下英治の小説。

ちとくさんには、もっと、自分の強みと弱みを見極めて、強みに徹した小説を書いて欲しい。
強みをとことんまで活かした文章を読ませて欲しい。
いいとこ、わるいとこをあわせたゴッタ煮ではなく。

間違えないで欲しい。
読者は、決して、君を知りたいのではない。
君の作り出す独特の世界を堪能したいのだ。

×蔵をもっともっとパワーアップさせ、彼の吐く息が臭うような小説を読んでみたい。
汗がかかるような近くで跳躍している×蔵を見たい。

次の作品に期待しています。
でわ!

火星さん、パンダさんにもよろしくお伝えくださいませ。
「「「「
http://homepage2.nifty.com/beaver/


まだまだ修行です。

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